相続税対策(鑑定評価の活用例)

我が国では平成24年に約126万人が亡くなっており、平成18年には死亡数が初めて出生数と逆転し、人口減少社会に突入しています。
高齢化が止まらないなか、かつてタブー視されていた「死」を間近に意識する人達が増えており、現在は生前から相続等に備える「終活」が一般にも浸透してきました。

高齢化社会の進行に伴い、相続問題は社会全体の中でより頻繁に起きる身近な問題になっています。
そのなかで、平成25年度の税制改正大綱が発表され、相続税基礎控除の4割削減が決定し、初めて相続税を納める個人が増えると予測されています(今年の平成27年1月1日以後の相続又は遺贈により取得する財産から改正された相続税が適用されます)。

現状、相続税の申告割合は4%程度となっているものの、相続税基礎控除の改正により6%程度に上昇し、特に大都市圏では地価の影響から「戸建の家を持っていると相続税がかかる可能性がある」と予測されており、相続問題の相談件数は増加の一途を辿るものと推測されています。

■改正前:基礎控除額:5,000万円+1,000万円×法定相続人数
■改正後:基礎控除額:3,000万円+ 600万円×法定相続人数

相続税法第22条では、「相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による」と定められています。
しかし、実際には申告期限までにすべての不動産の適正な時価を把握するのは困難ですので、画一的・簡便的な評価方法である財産評価基本通達(路線価方式、倍率方式)に基づく評価額を時価とみなしています。
相続財産の約半分は不動産の土地が占めておりますが、土地は個別性が非常に強く、現行の画一的な路線価方式等の財産評価では税負担の公平性にそぐわない納め過ぎ等の事例が多数認められており、適正な時価評価の観点から、公正中立の立場で不動産の経済価値を判定する不動産鑑定士の役割が期待されています。適正な時価を証明した鑑定評価額で申告することにより、相続税が減額できる(=適正な納税ができる)場合があります。

※平成4年3月、国税庁は、相続税の申告における土地の評価は原則的に路線価が基準とされるが、路線価に基づく評価額が「時価」を上回ることについて、申告や更正の請求の相続がある場合、路線価に基づく評価額でなければ受け付けないということがないように留意する旨、国税局に事務連絡をしています。すなわち、財産評価基本通達に基づく路線価評価で算定した価格が適正な時価を大幅に超える高い評価額となる(特別な事情がある)場合には、必ずしも路線価評価による価格で申告しなくてもよいという訳です。

なお、期限付きではありますが、既に申告し、相続税を支払っていた場合でも、鑑定評価書や広大地判定の意見書等を添付せずに申告した場合等は、更正の請求や嘆願請求を行い、鑑定評価書を添付して再度申告することにより、過払いの相続税を還付して貰える可能性があります。
最後に、相続税の減税が可能な場合がある土地を例示すれば以下の通りです。財産評価基本通達による補正率では、マーケットの時価に即応せず、適正に評価することが困難なものばかりです。従って、以下のような特殊な画地を相続等される際は、お気軽にご相談して頂ければ幸いです。

  • 広大地又は過小宅地
  • 間口が狭い又は奥行が長い土地
  • 不整形地(袋地、帯状画地等)
  • 道路より低い土地又は高い土地
  • 傾斜地、崖地を含む土地
  • 無道路地又は建築基準法上の道路に接面していない土地
  • 高圧線下地、高架下地、都市計画道路予定地を含む土地
  • 埋蔵文化財包蔵地、土壌汚染地
  • 市街地農地、市街地山林、市街地原野
  • 市街化調整区域の土地(宅地、雑種地、山林等) 等々