金融緩和と景気回復基調が続くなか、不動産の売買価格や取得時のキャップレート等は不動産投資が過熱したファンドバブル期(概ね2006年~2008年のリーマンショックまで)の水準にまでなってきたと言われております。
しかし、実際のところはどうなのでしょうか。以下、各種調査結果やプライスデータ等を参考に、ファンドバブル期と現在のキャップレート水準について一緒に見て行きたいと思います。
不動産投資家調査
まずは投資家へのアンケート調査です。
日本不動産研究所が5/26に公表した第32回「不動産投資家調査」によりますと、東京(丸の内、大手町地区)にあるAクラスオフィスビルの期待利回りは3.8%となり、2007年10月の調査と並ぶ過去最も低い水準にまで低下しました。
不動産投資家の今後1年間の投資スタンスについては、「新規投資を積極的に行う」が90%(前回94%)で高い水準を維持しています。
なお、今回調査では特別に、ファンドバブル期のピーク時を2007年10月と仮定し、当時と現在の市場環境について各投資家(127社)からアンケートの回答を得ていましたので、以下、調査結果の抜粋を記載します。
※当調査の期待利回りは、投資価値の判断(計算)に使われる還元利回りを指しており、通常、初年度の純収益を期待利回りで割ったものが投資価値になると定義されています。純収益は、減価償却前、税引き前の純収益(NOI)を指し、有効総収入から総費用を控除したものです(大規模修繕の資本的支出、一時金の運用益は含まない)。
- ファンドバブル期と比較した現在の不動産取引市場について、「かなり活発だ」「活発だ」の回答合計が約4割であった。なお、約5割の回答者が「当時と同じ程度である」とした。
- 現在の不動産取引市場について、ファンドバブル期と比較して違いがあると考える事項としては、「海外(アジア・中東)投資家の増加」とする回答が最も多く、次いで「ノンリコースローンの金利水準」とする回答であった。
- ファンドバブル期と比較して活況を呈しているアセットとしては、「物流施設」とする回答が最も多く、次いで、「ビジネスホテル」、「ヘルスケア」の順であった。
- ファンドバブル期と比較して活況を呈している地域は、「東京」との回答が圧倒的に多かった。
- 「物流施設」「ビジネスホテル」「シティホテル」については、期待する利回りがファンドバブル期よりも低くなった(0.1~0.5ポイント低くなった)とする回答が全体の約4割に達した。
- ファンドバブル期と比較した現在の価格感について、「過熱しすぎだ」「過熱している」とする回答の合計が約2割に達した。
- 今後のネガティブファクターとしては、「金利の上昇リスク」との回答が最もポイントが多く「賃料の伸び悩み」は僅差で二番目となった。
- 今後のポジティブファクターとしては、「インバウンド投資の一層の加速(海外投資家による一層の日本不動産投資)」とする回答が最もポイントが多く、次いで、「GPIFなど公的年金による不動産投資の開始」となった。
- 各アセットの今後の市況見通しについては、「ホテル」について「現在の状態が2020年まで続く」とする回答が約6割に達した。
オフィスと住宅、商業施設の期待利回り
この特別アンケートの調査によりますと、2015年4月時点の期待利回りについて、ファンドバブル期である2007年10月の水準と比べてどうかをアセット別に聞いたところ、オフィスと住宅、商業施設では「ファンドバブル期と同じ水準」という回答が最も多かったようです。
ホテルと物流施設の期待利回り
一方、ホテルと物流施設では「ファンドバブル期よりも0.1~0.5ポイント程度低くなった」という回答が全体の4割超を占めており、海外からの観光客などが増えホテルの市況が好転していることや、ネット通販の拡大で物流施設の需要が高まっていることなどが背景にあると見られています。
次回は、REIT取引利回りについて眺めてみましょう。