キャップレートの動向~ファンドバブル期との比較2~

REIT取引利回り

前回に続き次に、REITの取引利回りについて見てみたいと思います。

大阪のオフィスにスポットをあて、収集可能であったファンドバブル期と直近のNOI利回りについて数値が低い順に並べてみました。
当時と現在とでは物件の所在やグレード等が異なるため、厳密な比較は困難ですが、一定の傾向は探れると思います。

ファンドバブル期
タイプ 市区町村 物件名称 取引年月日 賃貸面積
(㎡):X
取得価格
(百万円):A
床単価
(千円):A/X
NOI
(百万円):B
CAP RATE
(%):B/A
オフィス 大阪市 JEI西本町ビル 2007/03/28 10,602 6,674 630 224 3.4
オフィス 大阪市 御堂筋MIDビル 2006/08/31 16,186 8,290 512 326 3.9
オフィス 大阪市 パシフィックマークス肥後橋 2006/09/26 7,622 5,573 731 221 4.0
オフィス 大阪市 SORA新大阪21 2008/04/25 21,653 19,251 889 875 4.6
オフィス 大阪市 北浜MIDビル 2008/04/24 10,190 10,800 1,060 495 4.6
直近2年間
タイプ 市区町村 物件名称 取引年月日 賃貸面積
(㎡):X
取得価格
(百万円):A
床単価
(千円):A/X
NOI
(百万円):B
CAP RATE
(%):B/A
オフィス 大阪市 本町ガーデンシティ 2015/04/24 17,007 38,600 2,270 1,605 4.2
オフィス 大阪市 NMプラザ御堂筋 2015/03/31 10,078 10,170 1,009 442 4.4
オフィス 大阪市 大阪丸紅ビル 2015/07/10 22,756 11,000 483 481 4.4
オフィス 大阪市 梅田スクエアビルディング 2015/04/01 10,369 15,524 1,497 702 4.5
オフィス 大阪市 本町南ガーデンシティ 2014/12/03 16,699 23,100 1,383 1,135 4.9

表のNOIは、鑑定評価で査定した公表数値であり、取得価格で割った値だけを比較しますと、直近2年間においては3%台のNOI利回りは見当たらないものの、数値の平均値はファンドバブルの頃と概ね同程度になっています。
なお、日経不動産マーケット情報によりますと、オフィスビルの推定NOI利回り(新規テナント想定)が掲載されておりますが、これによりますと、本町ガーデンシティは2.3%、ORE心斎橋ビルは3.5%、エプソン大阪ビルは3.9%となっているほか、上記NMプラザ御堂筋についても、鑑定ベースではなく、公表されている想定NOI利回りとしては3.8%となっており、マーケットは相当過熱しているものと思われます。

9割以上がファンドバブル期と同じか、それ以上に活発と見ている

前記の不動産投資家調査において、現在のマーケットは2007年当時と比べて「かなり活発だ」「活発だ」が4割、「当時と同じ程度」が5割ということは、回答者の9割以上がファンドバブル期と同じか、それ以上に活発と見ていることになります。
活況を呈している地域は「東京」との回答が圧倒的に多かったことから、大阪という地方都市に限定すれば、この回答結果がズバリ当てはまるかどうかは疑問ですが、REIT等の取引利回りを見る限り、あながち、その印象は否定できないのかもしれません。

今後の動向

大阪のオフィスについては、2016年に大型ビルの竣工はなく、需給の引き締まりから賃料の本格的な上昇が期待されている一方、利回りの確保が困難な物件取得競争に警戒感が見られるほか、長期的な床供給量の懸念材料(うめきた2期計画、梅田1丁目1番地計画、梅田3丁目計画等)もあり、今後の動向が注目されるところです。